カーブ少年3

雲一つない晴天の中試合が始まった。打順は1番。彼がレギュラーに選ばれたのはキャッチャーの腕もさることながら、打者としてもすぐれた才能を有しているからだった。天は二物を与えずと言うが、野球においては大体において優れた選手というのは、何をしても人よりも勝っていることが多い。彼のチームは徹底的な出塁主義を貫くチームであった。従って足が速かろうと、遅かろうと1番打者になる可能性があるし、ホームランが打てようと、打てなかろうと、4番打者になることもある。彼のチームにとって打順とは、そのまま出塁率順であった。彼は小さいころからキャッチャーとして出場してきたせいか、打席でもよく考えて打つことを無意識のうちに体得していた。しかしキャッチャーの時とは違い、打席での彼は「好球必打」だけを意識していた。相手が甘い球を投げる以外に自分に打つチャンスはないと考えていた為、ストライクを二つ取られるまで狙い球であったとしても、厳しいコースには手を出さず、逆に甘いコースであったとしても自分の狙い球でなければ手を出さないことを徹底していた。そして追い込まれると、積極的にファアボール狙う。

彼の一見、消極的ともいえる打撃スタイルは、彼のチームの理念に絶妙に噛みあった。彼は高校に上がるまでその実績を認められず(チャンスではファアボールなので目立たず、特に足も速くないので、目立つ場面がない)8番キャッチャーを余儀なくされていた。

 

続く